アドラー心理学とは

アドラー心理学って何?

ナビゲーター有沙さん

夢人先生!アドラー心理学ってどんな心理学なんですか?

夢人先生

気になるよね。少しかいつまんでお話しますね。

アドラー心理学という名前は聞いたことあるけど、実際どんな心理学かわからない…

そんな方のために少しだけ解説します。

精神科医アルフレッド・アドラーがはじめた心理学

アルフレッド・アドラーは1870年にオーストリア郊外で生まれました。ユダヤ人で中産階級の穀物商の家の6人きょうだいの次男。

ウィーン大学の医学部で学び、卒業後は眼科、内科の医師として診療していましたが、1902年、心理学者のフロイトとの出会いから精神医学へと傾倒していき、1912年「個人心理学」(アドラー心理学)を始めます。

アドラーの研究は「劣等感」からはじまり、人それぞれが持つ人生の運動法則である「ライフスタイル」、そして人類全体の平和を実現させていくための思想である「共同体感覚」という風に展開していきました。

また、アドラーは子どもたちの教育に重要性を感じ、世界ではじめての児童相談所を設立したと言われます。

そんなアドラーですが、とてもユーモアあふれる人物であったと言われています。招待された会食からこっそり友人と抜け出し、ドライブに出かけてしまう大胆さもあったとか。

一方で、おもちゃを散らかした子どもに「上手におもちゃを広げることができましたね。今度は上手におもちゃをまとめられますか?」と、ていねいに、繊細に、そして粘り強く子どもと察する姿も。相手の力や良さに注目して、勇気づけながら行動を促していくコミュニケーションにはやはり脱帽ですね。

アドラー心理学は現代の様々な心理学、心理療法、コミュニケーション術の源流となっている心理学といっても過言ではありません。

ナビゲーター有沙さん

へえー、アドラーってユーモアに富んだ人だったんだ。

夢人先生

かなりお茶目な人だったみたいね。好奇心旺盛な人で、飽きっぽい人でもあったみたいですよ。

アドラー心理学の5つの前提

アドラー心理学がどんな心理学であるかを学ぶとき、はじめに大前提となる5つのポイントを押さえておくと便利です。

人生のあらゆることは自分が選択している

アドラー心理学では、たとえば遺伝や環境、過去のトラウマが人生を決めるとは考えません。常に今の自分が人生を選んでいるし、選ぶことができると考えています。

これをアドラー心理学用語で「個人の主体性」「自己決定性」などと呼びます。

幸せに生きるも、不幸せに生きるも自分の選択次第。欠点を見て生きるか、長所を見て生きるかも自分の選択次第。

アドラー心理学を受け入れることで、これまでの人生がより自分の人生へと変化していきます。

すべての悩みは対人関係によるもの

アドラー心理学は別名、「対人関係の心理学」とも言われます。そしてアドラーは「すべての悩みは対人関係によるもの」とも言いました。

このことをアドラー心理学では「社会統合論」「対人関係論」と呼びます。

パニック障害の動悸、うつ、摂食障害、強迫性障害による確認行為、頭痛など、一見すると関係なさそうなことでも、実は対人関係につながっていくとアドラー心理学では考えます。

私たちはこの世界に一人で存在していません。自分が身を置く対人関係、共同体に網の目のように埋め込まれた存在なのです。そこではさまざまな対人関係が交差し、お互いがお互いに影響を与えながらさまざまなできごとが起きていきます。

自分を悩ませている思考や感情、行動がどのように対人関係と結びついているかを知ることで、解決の糸口が見つかるのです。

原因ではなく目的を考える

ものごとの原因ではなく、目的を考えることを「目的論」と呼びます。

たとえば、「仕事でミスがうまくできなくて自分を責めてひどく落ち込んでしまう」というのは、「仕事がうまくいかない」というのが原因で、「自分を責める」というのが結果だと私たちは考えると思います。これは社会通念でもある原因論的な考え方。

アドラー心理学はこう考えません。「自分を責める」とか「落ち込む」という行為に目的があると考えます。

その目的は人それぞれですが、たとえば「これ以上怒られないようにするため」とか「誰かに手伝ってもらうため」、あとは「誰かに構ってもらうため」など。

それら人それぞれの隠れた目的を叶えるために、今の状態や感情を使っていると考えていくのです。

心の中よりコミュニケーションが影響する

アドラー心理学では、どんなに矛盾した思考や感情、行動が起きていようと、結局ひとつの行動に向かっていると考えます。

人間の精神活動はそれぞれが違う動きをしているようで、実は分業協力しながらひとつの全体として機能しているのです。

たとえば、「お酒をやめたい」と「でも飲みたい」は一見すると矛盾葛藤してそうです。その先を見ると「結局お酒を飲む」という行為をしているとします。

その場合、この人は結局「お酒を飲む」という行為に体全体が向かっているのだなと見立てが立ちます。自分の中には矛盾葛藤はないのです。

もし矛盾や葛藤があるとするのなら、それは人と人との間にあるとアドラー心理学では考えます。

たとえば、家族への体裁や自分への言い訳、会社に行かない理由など、自分と周りとの関係に矛盾葛藤があるわけです。

こういった考え方を「全体論」といいます。

なのでアドラー心理学では、つねに心の中ではなく、実際に起きたコミュニケーション、できごとを中心に話を進めていきます。

意味づけ次第で人生は変わる

私たちが見ている世界は事実そのものではなく、自分の中にある価値観のフィルターを通して見た主観的な意見の世界なのです。

色眼鏡で世界を見ているのです。このことを現代の言葉だと「認知バイアス」、アドラーが使っていた言葉だと「統覚バイアス」と呼んでいます。

ある人の顔が不機嫌そうで、「私のことを嫌っている」と思っても、それは事実ではなく、自分のフィルターを通した結果、そのできごとを「まるで私のことを嫌っているかのように」意味づけているだけにすぎません。

自分が自分のままに生きやすくするために、外界の情報を都合よく「まるで〜かのように」に受け取っているのです。

これをアドラー心理学では「仮想論」と呼んでいます。

自分の捉え方次第で世界はいくらでも変わるのです。

夢人先生

以上が5つのポイントだね。

ナビゲーター有沙さん

なるほどですね…なかなか難しい笑

夢人先生

まぁ確かにね笑
はじめは呪文のように覚えておいて、日常の中でこれらのことを考えていれば、自然と腑に落ちてきますよ!

ナビゲーター有沙さん

そういうものか…やってみます!

夢人先生

ぜひ!ではあと2つほど、大切なことをお伝えしておきますね。

人類の平和を願う思想

アドラー心理学が他の心理学と確実に違うところは、アドラー自身が思い描いた思想があるという部分です。

本来、心理学は科学の分野の一つ。科学に思想が入るのは御法度です。科学はあくまで「できるか・できないか」の世界。一方、思想は「していいか・してはいけないか」の世界です。

この両者は相容れないことがお約束ですが、アドラーは悲惨な戦争の経験から、これからの世界の行末のため、思想を自身の心理学に取り入れていきました。

その思想が「共同体感覚」というものです。

人間同士の心の交流、共同生活から生まれる友愛や友情、地域社会、そして愛情であるとアドラーは言いました。

一人ひとりが自分のことだけではなく、相手にとっての幸せ、みんなにとっての幸せを考えながら生きていくことが必要だと、当時のアドラーは強く感じたのです。

協力の心理学

アドラー心理学は誤解されがちな面があって、それは「自分は自分、相手は相手」のように、自分が楽になるために相手を切り離すような使われ方や考え方をされること。

これは大きな間違いで、そもそもアドラー心理学は人と協力をしたい心理学なのです。

協力をするために、それぞれが持つべき責任や仕事を明確にすることをするのです。それは決して自分が楽になるためでもなければ、自分勝手に生きるためでもありません。

全体の学び、成長、幸せのために動いていきたいのです。

人々が、それぞれにできることで力を合わせていく。共同体の中で協力的に生きていく。貢献的に生きていく。

アドラー心理学は独自に生きていくための心理学ではなく、人と協力・共生していくための心理学なのです。

ナビゲーター有沙さん

アドラーは平和を願っていたんですね。けっこうドライな心理学だと思っていたけど、協力をしたい心理学なんだ。

夢人先生

その辺り意外と勘違いされやすいんですよね。本当はとてもあたたかい心理学なんです。

ナビゲーター有沙さん

アドラー心理学がもっと好きになりそう!もっと学びたいときはどうすればいいですか?

夢人先生

ぜひ勉強会に参加してみたり、講座に参加してみてください。人と学ぶのがアドラー心理学の学び方ですからね!

ナビゲーター有沙さん

はーい!これからもよろしくお願いします笑